CASE6
緩和ケアは普遍的に必要なもの
緩和ケアは普遍的に必要なもの
チーム座談会
患者さんを第一に。
それぞれの専門性を高め、チームとして乗り越える。
住友病院では多くのチームが日々活発に活動しています。目まぐるしく変化する医療現場で、今、緩和ケアチームとして求められていることとは?職種の異なる5名が、それぞれの考える「緩和ケア」を語ります。
(左から順に)栄養士 / 薬剤師 / 医師 / 看護師 / 理学療法士
がんと診断された時からが緩和ケアははじまる
- 初めは有志からはじまって、もう、緩和ケアチームも十数年経ちますね。
- そうだね。「やっぱり、緩和ケアは重要」と。はじめは何をどうしたら良いのか分からなくていっぱい勉強したよ!
- そうですよね!
- みんなで学んでいく中で緩和ケアって特別なものじゃなくて、普遍的に必要なケアだと感じています。主治医の先生やナースからの依頼で私達の活動は始まりますが、今では当時よりもずっと依頼件数も増えましたね。
-
ケアの中で患者さんの苦痛を取り除くことはもちろん大切やけど、「苦痛」といっても色々あるよね。
身体的な苦痛の中には、痛みや息苦しさ、吐き気や倦怠感。もちろんそういう苦しみを取るっていう目標はあるけれど、身体的な苦痛だけではなくて「精神的」な苦痛も取り除かなければいけないよね。
- そうですよね。「全人的苦痛」の視点で考えていかないと。
-
そう。会社を辞めないといけないとか、自分は何のために生きてきたんやろうとか…。
そういった苦しみをできるだけ取り除くのが緩和ケアやと思っている。
そう考えれば、「がんになった時」「がんと診断された時」から始まるのが緩和ケアだね。がんになった時、不安になるからね。
- (全員大きくうなずく)
- 以前、患者会のご家族のお話を伺う機会があって「緩和ケアで助かったと感じる点はどの部分ですか?」と質問が出た時、ご家族は「がんと診断された時に、とても不安な心を助けてくれた」とおっしゃっていた。やっぱりはじめの段階から介入していかないといけないと感じたよ。
チームの中で担う、それぞれの役割と思い
-
僕は身体担当の医師として具体的には痛みを取る、そのために画像診断や、理学的所見、患者さんのお話を注意深く聞き、痛みの原因を考えて何とか取るようにする。
心の部分で担当する精神科の先生もいるし、身体だけじゃなくて心のケアもする。その2つが緩和ケアチームの医師の大切な役割やと思うな。
- まずは体の苦痛を取ることですよね。身体が痛い、苦しいままだと心のケアとか他のケアの効果が出にくいですから…。
- そうだね。痛いままで僕らの話は聞くことができないし、痛いこと自体が心にあたえる影響も大きいから。心のケアの前にしっかりと痛みを取ってあげることが大事やね。
- 看護師の役割としては、全人的な視点で患者さんとご家族の苦痛がどこにあるのかを考え、どこに改善点があるのかを見極めるのが大切だと感じています。まず体の苦痛を取っていくことを優先して。それから気持ちの部分や生活で困り事がどこか探していくことが大切と思っていて。そして、それを他の職種やチームメンバーへ伝えて調整することですね。
-
それは、僕ら以上に看護師さんが得意とするところやね。
医師には言いにくいことも、看護師さんだからこそ患者さんは言えることも多いよ。そのあたり、看護師さんは本当に上手に接しているよね。
-
そんな風に言っていただいてうれしいです!ありがとうございます。
様々な意思決定をサポートするために「どこに希望があるのか」を探しながら、丁寧に思いをうかがうようにしています。
- リハビリはどう?いつもたくさんアドバイスをもらって実践しているよ。
-
理学療法士として、痛みで困っている患者さんに少しでも痛みなく動ける方法を見つけ出し、楽に動いてほしいという思いがありますね。
「あとこれだけできたら車いすに乗って外出できる!」とか、伸びしろを判断してリハビリを開始します。身体の機能が落ちてしんどくてできない場合は、リハビリで回復できるようにサポートしたいですね。
少しでも回復して例えば外出できると、心理的なケアに繋がりますから。
リハビリ室では笑顔が多いですね!笑かして笑かして(笑)
- それは先生のキャラかも!
- (笑)
- リハビリができるって患者さんにも、そのご家族にも喜んでもらっているよね。
- 緩和ケアにおけるリハビリは、機能を上げる、鍛えるっていうだけでなくて、しんどい症状を楽にしたり、今ある患者さんの身体機能を保つことも大きな役割ですよね。患者さんが「こんなしんどいのに無理!」って気負うことなく、少しでも動けるようになったり、体が楽になることで希望を持ち、喜びが生まれるようになると思うんです。
- 「こうゆう方法があるんや!」、とリハビリに来るのも楽しみにしてほしいね。
- 楽しみにしてる人多いよ!「どこに希望があるのか」「今後どんなことをしたいのか」っていうのは大切だね。栄養士さんはどう?
- チームでの栄養士の役割として私たちは治療しようとしている患者さんに対して、より治療が効果的になるために栄養状態を良くすることが大切だと思っています。患者さんの食事状況をカルテで見ながら、患者さんのところへ行って、困っていることなどを聞いてサポートしています。
- 食べることは生きることに直結していますもんね。
- そう!人間って、やっぱりおいしいもの食べたいしなぁ…。
- (笑)
- 食欲だけじゃなくて、噛む力や飲み込みの機能なども見ながら食事形態も変更するなどの、ご提案もさせていただいたりしています。
- 食べられることで気持ちがポジティブになったりするので。栄養士さんの存在は心強いです!
- ありがとうございます。
- 薬剤師さんはいかがですか?
- 私は薬剤師として「知識」の面から関わっていこうと。先生が選んでくださったお薬や、看護師さんからの情報、そういったものを総合的に考え、お薬の使用方法や配合変化、相互作用、どうやったらお薬が減らせるのかを後方支援としてサポートしたいと思っています。
- 全然後方支援じゃないよ!患者さんには僕らが説明するよりも理論的に分かりやすく説明してくれているし。患者さんは副作用のことは一番心配だから、その部分でもしっかりとサポートしてくれているし!
- 私もほぼ毎日薬剤師さんに電話してます(笑)いろいろ教えてもらっています。
- 各病棟に薬剤師はいるので、今後、各病棟の担当の方々と情報をやり取りして、チームでの橋渡しの役割も担っていきたいと思っています。
ひとりではできない事もチームでなら向き合える
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今後、患者さんの苦痛緩和がより早期にできるように取り組んでいきたいですね。
外来で治療されている患者さんも増えてきているし、入院中に比べてお話する時間も短くなります。その中でも緩和治療の質を上げていくことが大切だと思っています。
-
もっと多くの患者さんと関わって、それぞれの専門性を高めていこう!うちのチームいいよね、みんな患者さんのこと考えている。
これからもそれぞれの専門性を高めていって、もっと多くの患者さんやご家族の支援ができるように関わっていこう!
- 上手くいかないこともあり、ひとりなら向き合えないこともあるけれど、こうやってチームでいたら諦めず頑張ろうと思える、そう私は思ってるんです。
- 同感です。
- これからも頑張っていきましょう!
- はい!!